スタッフ紹介

相手の立場になって考えることの大切さを教えてくれた出来事

金 京淑(看護師主任)  年入職

金京淑

看護師になって間もないころ、忘れられないできごとがありました。10代の若い患者さんを受け持っていたのですが、翌日が手術だという日にその患者さんは朝からいなくなってしまったんです。外出したらしいのですが、手がかりもなく、家族の方にも連絡がつかず、その日は完全にパニックになり、どうしよう…と思っていたら日勤が終わるころにぶらっと帰ってきたんです。私はもう許せなくてカッとなってしまい、頭ごなしに注意しました。それまで打ち解けていたと思っていた分、余計に腹立たしかったんです。患者さんは謝りもせずに横を向いてふてくされた感じでした。他のナースが理由を聞くと、実は別の病院に友人が入院していて手術を受けたので、お見舞いに行っていたということだったんですが、それでも「無断で外出する相手が悪い」と私は意地を張りました。結局退院するまで一言も口を利かなかったんです。

患者さんが退院した日、仕事を終えてバイクに乗ろうとすると、椅子に白い紙がはってありました。その子からの手紙でした。「あのときはすいませんでした。ずっと謝りたかったのにできませんでした。」って書いてありました。

私は自分を恥じました。何も聞いてあげなかった…。私たちの都合を一方的に伝えてばかりで患者さんの都合や気持ちによりそうということを怠っていました。

主任業務を3年こなして、やっと業務がわかってきて自分なりのスタンスで仕事ができるかなと思ったころに病棟の師長に抜擢されました。30歳でまだ独身の時でした。責任の重さ、特にスタッフ管理の重責がのしかかりました。自分では精一杯気を使って勤務を組んでいるつもりでも、特にママさんナースの休日勤務への不平などは直接ではなく人づてに聞こえてくるので、「直接言えば説明もするのに」と悔しくて重苦しい気分になります。だから「平等にやっているこちらが正しい」と毅然と割り切って考えるようにしていました。

師長時代に結婚、出産を経験し、出産時の体調がもとで私は師長職を降りました。今、3人の子供の母になりましたが、あのとき勤務繰りを不平に思ったママさんナースの気持ちがよくわかります。子育てをしながら看護の仕事を続ける大変さも知りました。何より普段仕事を優先して家族に負担をかけている分、子供が小さい間の家族みんなが揃う時間のかけがえのなさを知りました。相手の立場を知り、共感すること。同じ勤務を伝えるのにもその思いがわかって伝えるのとそうでないのとでスタッフの思いも変わるはずです。

こうして思い起こすと、私はいつも思いが空回りしてばかりでした。でもそのおかげで以前よりも患者様に対してもスタッフに対しても相手の立場に立って考える、寄り添うという姿勢を少しは身につけられたのではないかと思っています。

今現在は7階病棟の主任業務に就いています。地域包括ケア病棟として患者様に在宅に戻っていただくためのサポートをさせていただく病棟なのですが、在宅に戻っていただいても残念ながらすぐにまた戻ってきてしまう方がいらっしゃいます。独居の高齢患者様で認知症があっても軽度の場合は要介護認定がつかないために在宅では援助が受けられず、服薬を間違って体調を壊してしまう等、背景には社会的要素がある場合が多いのです。

これまで急性期病棟で患者様に退院していただくことをゴールと考えて看護業務をしてきたのですが、この病棟での業務を通じて患者さんにとっては入院中よりも在宅でいかに健康管理ができるかということの方が大きな問題であることに気付かされました。その視点で援助していくうえで私たちに何ができるかを突き詰めていきたいと思っています。

そのこともあって、今福祉の知識をもっと身に着けたいと思っています。そして常に目標を持って、生涯看護師を続けていこうと思います。

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